みなさん、こんにちは。いろはのページです。
ご自身やご家族に、突然「いつもと違う症状」が出たら、どうしますか?
突然の症状の中には、一刻も早い治療が必要な病気が隠れていることがあります。
今回は、特に注意したい症状について、代表的な病気と少し専門的な医学知識、そして「その場でどう対応するか」をまとめました。
※ここに挙げた症状だけで病気を判断することはできません。
「突然」「非常に強い」「いつもと明らかに違う」場合は、救急車を呼ぶことをためらわないことが大切です。
1.突然、吐いた
突然の嘔吐は、胃腸炎や食あたりなどでも起こります。
しかし、消化器以外の病気でも嘔吐が起こることがあります。

● 心筋梗塞・急性冠症候群
心臓自体を栄養する血管が冠動脈です。
この冠動脈が、血栓などによって急に狭くなったり閉塞したりすると、心筋への血流が不足します。
胸痛だけでなく、自律神経反射による吐き気・嘔吐、冷や汗、息苦しさなどが出ることがあります。
特に胸の圧迫感、冷や汗、息苦しさ、肩・腕・背中・みぞおちの不快感などを伴う場合は 、要注意です。

● 脳卒中
脳出血やくも膜下出血では、頭蓋内圧の上昇などによって吐き気・嘔吐が起こることがあります。
突然の激しい頭痛、手足の麻痺・しびれ、言語障害、意識障害などを伴えば緊急性が高い状態です。
● 腸閉塞
腸の内容物が先へ進めなくなると、腸管が拡張して、腹痛・腹部膨満・嘔吐などが起こります。
便やガス(おなら)が出ないことも重要な症状です。

🚑 緊急時の対応
心筋梗塞や脳卒中が疑われる症状を伴っている場合は、119番通報を。
嘔吐している人を無理に歩かせたり、車で病院へ連れて行ったりしないほうが安全です。
また、意識がもうろうとしている場合は、食べ物や飲み物、薬を無理に飲ませないようにしましょう。
2.「ゼロゼロ、ゴロゴロ」と呼吸している
痰や唾液をうまく出せず、気道に分泌物がたまっていることがあります。
高齢者や、脳卒中などで嚥下機能・咳反射が低下している人では特に注意が必要です。
● 気道分泌物の貯留・気道閉塞
分泌物が気道を狭くすると、「ゼロゼロ」「ゴロゴロ」という呼吸音が聞こえることがあります。
さらに気道が閉塞すると、その先の肺に空気が入らなくなり、無気肺を起こすこともあります。

● 肺炎・誤嚥性肺炎
食べ物や唾液などを誤嚥することで、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。
高齢者では、発熱が目立たない傾向があります。
元気がない・食欲がない・呼吸が速いなどが最初の変化になることもあります。

● 急性心不全・肺水腫
左心室のポンプ機能が低下すると肺静脈側に血液がうっ滞します。
そして、肺の毛細血管から水分が漏れ出します。
急激に起こると心原性肺水腫となり、強い息苦しさや咳、泡状の痰などがみられることがあります。
🚑 緊急時の対応
息苦しい、呼吸が速い、唇が紫色、会話ができない、意識がおかしいなどがあれば、すぐに119番を。
呼吸が苦しい人を無理に歩かせないようにします。
意識があり、本人が楽だと感じる姿勢をとらせましょう。
また、意識がない人に飲み物を与えたり、口の奥へ指を入れて痰を取ろうとしたりするのは危険です。
3.血便、または真っ黒な便が出た!
● 消化管出血
真っ黒でベタベタしたタール状便(黒色便)は、胃や十二指腸などの上部消化管からの出血を示すことがあります。
原因として、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんなどがあります。
一方、鮮血便では痔や大腸からの出血などが考えられます。
ただし、大量出血の場合には上部消化管からの出血でも赤い血便になることがあります。
● 食道・胃静脈瘤出血
肝硬変などで門脈圧が上昇すると、食道や胃に静脈瘤ができることがあります。
これが破裂すると大量出血し、吐血、黒色便、血圧低下、ショックにつながることがあります。
🚑 緊急時の対応
大量の血便、吐血、黒色便に加えて、
「めまい・ふらつき、冷や汗、動悸、顔色不良、意識がぼんやりする」
などがあれば、119番を。
出血している可能性がある場合は、食べ物や飲み物を与えず、できるだけ安静にします。
また、服用している薬、特に抗凝固薬・抗血小板薬などがあれば、救急隊や医療者に伝えましょう。
4.突然、手足がしびれた・力が入らない
● 脳梗塞・脳出血などの脳卒中
脳の血管が詰まったり破れたりすると、その血管が支配する脳組織が障害されます。
運動や感覚を司る領域が障害されると、反対側の手足に麻痺やしびれが起こることがあります。
突然、
- 片側の手足がしびれる
- 力が入らない
- 顔の片側が下がる
- ろれつが回らない
- 言葉が出ない
- 歩けない
などが起こったら、脳卒中を疑います。
🚑 緊急時の対応
すぐに119番をしましょう。
ここでは「少し休ませて様子を見る」は避けましょう。
そして、
「最後に正常だった時刻」または「症状に気づいた時刻」
を確認してください。
これは脳梗塞の治療方針を決めるうえで非常に重要です。
本人に食べ物や飲み物を与えたり、自己判断で薬を飲ませたりするのも避けましょう。
5.突然、背中・腰・お腹がものすごく痛くなった
● 急性大動脈解離
これは大動脈の内膜に亀裂が入り、血液が大動脈壁の中へ入り込んで、血管壁を長軸方向に剥離していく病気です。
典型的には、
「突然発症する、非常に強い胸痛・背部痛」
が特徴です。
解離が広がると、痛みの場所が移動することもあります。
● 腹部大動脈瘤破裂
突然の激しい腹痛・腰痛、血圧低下、意識障害などがみられることがあります。
腹部の大動脈に、もともと瘤が出来ていて、それが破裂した場合です。
命の危険がある状態です。
「腹部の腫瘤部分が拍動する」「低血圧」が特徴です。
この腹部の大動脈に腫瘤ができやすい人の特徴は、次の3つです。
・「男性」
・「高齢者」
・「喫煙」
です。

🚑 緊急時の対応
これらは生命に関わる救急疾患です。
突然の激しい胸痛・背部痛・腹痛・腰痛があれば119番をしましょう。
できるだけ安静にして、本人を歩かせないようにします。
「腰痛だろう」と思ってマッサージをしたり、無理に体を動かしたりするのは避けましょう。
6.胸・肩・腕・背中・みぞおちが痛い
● 急性心筋梗塞
心筋梗塞の痛みは胸だけとは限りません。
心臓からの痛みの情報が脊髄を通る際に、肩・腕・背中・あご・みぞおちなどの痛みとして感じられることがあります。
これを関連痛・放散痛と呼びます。
冷や汗、吐き気、息苦しさなどを伴うこともあります。

● 大動脈解離
突然の激しい胸痛・背部痛が典型的です。
● 肺血栓塞栓症
脚などにできた血栓が血流に乗って、肺動脈に詰まる病気です。
突然の息苦しさ、胸痛、頻呼吸、動悸、失神などが起こることがあります。
🚑 緊急時の対応
突然の胸痛や強い息苦しさがあれば、119番を。
本人を歩かせたり、自分で運転させたりしないようにしましょう。
意識がある場合は、本人が最も楽な姿勢で安静にします。

7.「今まで経験したことがない」ほどの激しい頭痛
● くも膜下出血
脳動脈瘤などが破裂し、脳を覆う“くも膜”の下に出血する病気です。
突然、強い頭痛が起きた場合は、まずはくも膜下出血が疑われます。
・「突然の発症」
・「今までで最悪」
・「どんどん悪くなっている」
の3つがサインです。
さらに、
・「めまいがする」
・「吐き気・嘔吐する」
・「首の痛みがある(頸部痛)」
がある場合もあります。
緊急性高いですので、すぐに救急車を呼びましょう。

● 脳出血
脳内の血管が破れて出血し場合です。
その出血部位によって麻痺、言語障害、意識障害、頭痛、嘔吐などが起こります。
高血圧や糖尿病があって、飲酒や喫煙の習慣がある人に起こりやすいとされています。

● 髄膜炎
細菌やウイルスなどによって“髄膜”に炎症が起こる病気です。
発熱、頭痛、吐き気・嘔吐、首の硬さ、意識障害などがみられます。
🚑 緊急時の対応
突然の激しい頭痛や、頭痛に意識障害・麻痺・言語障害・けいれんなどを伴う場合は、119番をしましょう。
本人を一人にせず、安静にします。
意識が低下している場合は、飲み物や薬を無理に飲ませないでください。
8.救急車を呼ぶとき、何を伝える?
いざ119番すると、慌ててしまいますね。
でも、次のことを伝えられると救急隊や医療機関にとって重要な情報になります。
① 何が起きたのか
「突然、右手と右足がしびれました」
② いつ始まったのか
「午後8時ごろ、突然始まりました」
③ 今の状態
「意識はありますが、ろれつが回りません」
④ 持病や服用中の薬
「心房細動があります」
「血液を固まりにくくする薬を飲んでいます」
⑤ いつもの状態との違い
「普段は普通に歩けるのに、今は立てません」
可能なら、お薬手帳や普段飲んでいる薬の情報を準備しておきましょう。

最後に――「いつもと違う」は大切なサインです
今回紹介した病気が、必ずその症状の原因というわけではありません。
しかし、
「突然」
「非常に強い」
「いつもと明らかに違う」
「意識がおかしい」
「呼吸が苦しい」
「片側の手足がおかしい」
このような変化は、重大な病気のサインである可能性があります。

特に、
🔴 突然の片側の麻痺・しびれ
🔴 突然の激しい頭痛
🔴 突然の激しい胸・背中の痛み
🔴 強い胸痛や息苦しさ
🔴 大量の吐血・血便
🔴 意識障害や呼吸困難
があれば、119番通報をためらわないでください。
救急車を呼ぶか迷う場合でも、地域によっては救急相談窓口(#7119など)が利用できます。
救急疾患では、「どの病気なのか」を家庭で判断することより、「危険な状態かもしれない」と判断して、早く医療につなげることが大切です。
そして、
「いつから症状が始まったのか」
を確認してください。
その数分、数十分が、その後の治療や回復に影響することがあります。
大切なご家族を守るために、
「いつもと違う」――その感覚を大切にしましょう。

【参考文献】
『病気の地図帳』(講談社)



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