ソンディ心理学・・・運命とは何か⁈

運命の不思議

みなさん、こんにちは。
以前わたしは、人はどのような〈運命の星〉を持つのか、についての記事を書きました。
では、みなさんは、その自分の〈運命〉が、いったいどこから作られてきたのかを、考えたことはありませんか?

今回は、運命はどこから形成されるのか、という事についてのお話です。
(第2章では、今回の主人公であるソンディ博士自身の恋愛体験が出てきますが、皆さんもご自身の恋愛をふりかえってみながら、読み進んでいかれる良いでしょう。)

1、〈ソンディ心理学〉による、ドストエフスキーにみる〈先祖の抑圧意識〉


1、運命が、人それぞれによって違うのは、何からきているのか?

私たち人間の〈運命〉というものは、まったく何の理由もなく、運命が作られるとは考えにくいでしょう。
特に悪い運命の元で苦しんでいる人は、
「なんで自分はこんな運命の星の元に生まれてきたんだ!」
と思っているのではないでしょうか?

じつは〈良い運命〉も、〈悪い運命〉も、そうしたものが出来上がる原因があるのです。

さて、リポット・ソンディ(Lipot.Szondi 1893-1986)という心理学者の名前を聞いたことがあるでしょうか?
彼は、人の運命を先祖の抑圧意識によって決定される、としました。
つまり、先祖の生き様(死に様)が私たちの人生の運命を形作っている、というのです。
いや、先祖が歩んだ運命を、そのままそっくりに自分が繰り返しているのです。

リポット・ソンディ(Léopold Szondi、1893-1986)

その現象を、深層心理学(ソンディ心理学)の方から見ていこうと思います。

では次に、その理論をご紹介いたします。

2、ドストエフスキーは、なぜ、主人公に殺人者を選んだのか⁈
ソンディ博士が、彼の運命心理学を理論を打ち立てるに当たって、彼自身の運命に関わる体験と、ロシアの文豪・ドストエフスキーの作品が大きく関わっています。

ここではまず、そのドストエフスキーについて見てみましょう。
『運命への挑戦』(L・sondi著、佐竹隆三訳)から、長いですが、引用します。

『無意識の選択言語の考えがソンディの心のなかにはじめて浮かんだのは非常に早く、1911年であった、当時彼は、高等学校の卒業試験を終えたばかりの少年で、18歳であった。彼はドストエフスキーの作品を熱心に読み、「罪と罰および「カラマーゾフの兄弟」を読んだ時、はじめて「ドストエフスキーは、何故彼の小説の主人公にとくに殺人者を選んだのであろうか」ということを、自らに問うてみたのである。幸運なことには、当時(1911年)「ドストエフスキーと父親殺し」に関するフロイトの論文を彼はまだ読んでいなかった。というのは(中略)このようにして、ソンディは青年特有の大胆さで、独自の理論を展開させたのである。そして、その理論というのはおよそ次のようなものであった。
ドストエフスキーは自らのなかに彼の家族的な遺伝素質のなかに殺人者を潜在的に担っていた故に、彼は殺人者の精神生活を表現することができたし、また表現せずにはいられなかったのである。すなわち、から自身潜在的な殺人者であったのである。ドストエフスキーは、彼の小説の主人公の魂の中に、無意識的に、この潜在的な殺人者妄想を投影したのである。』

「ドストエフスキーは、何故彼の小説の主人公にとくに殺人者を選んだのであろうか⁈」
まだ18歳だった優秀なソンディ青年は、ドストエフスキー作品を読みふけっていて、このような疑問いだいたのです。
ここが彼の天才たるところですね。
誰でもが疑問に思ってもおかしそうでありながら,実は誰も思いつかなかった疑問をもつ。
こうして彼は、ドストエフスキーを深く掘り探ってみようと考えたのでした。
そして、独自の理論を作り上げ始めたのです。

フョードル・ドストエフスキー(1821ー1881)

3、ドストエフスキーの深層意識にある、「潜在的な殺人者」

こうしてのちに、ソンディは精神医学者になり心理学者になりました。

『そして1927年に、ハンガリーの文部省は彼のために治療教育学の大学研究室を用意した。当時彼は、大学で精神病理学の講師であったが、この研究室で共同研究者達とともに、彼の若き日の理論を再びとりあげることができたのである。
(中略)
ドストエフスキーの祖先の系列の中には、実際に殺人者と聖職者とが現れている。ドストエフスキー自身「潜在的な殺人者」であり、それゆえに、彼の小説の主人公として、「殺人者」を選んだというソンディの若き日の理論は、この遺伝学的な資料によって、それを初めて聞いたときに人々が感じたような「信じがたいこと」ではもはやなくなったのである。』

このようにドストエフスキーの内にある「潜在的な殺人者」を発見したのですね。
さらにソンディは、ドストエフスキー以外にもバルザックほか、数多くの実例をあげて、その学説の根拠としました。
その学説は、深層心理学の一つの潮流となっています。

2、ソンディ自身の運命に関する、不気味で不思議な体験


1、大失敗に終わった、異母兄の結婚(恋愛) 

実は、若きソンディ青年が運命心理学の理論を作り上げるにあたっては、ソンディ自身の、強烈な、そして不気味な体験があったのです。
ドストエフスキーなど他者の分析だけではなく、ソンディ自身の身に起きた強烈な〈体験〉が、運命心理学への目覚めとなっているのです。

それを見てみましょう。
ここでは、『君は誰の輪廻転生(うまれかわり)か』(桐山靖雄著)が非常にわかりやすく書かれていますので、それを引用していきます。

『次の文章は、かれのいくつもの論文の中に出てくるかれ自身の体験を、私が物語ふうにアレンジしたものである。

1916年、第一次世界大戦の最中であった。
ウイーン大学で、当時著名な心理学者であったワグナー・ジャレッグ教授の講義を、毎日、熱心に聴講している一人の若い軍医中尉がいた。
かれ(ソンディ)は、連隊の野戦病院から、傷病者をウィーンの病院に護送してきたのであったが、このチャンスを生かして、わずかな休暇を、かねてから一度謦咳(けいがい)に接したいと願っていたジャレッグ教授の教室にかよっていたのである。
若い中尉は・・・かれはまだ23才であった・・・なんとかキュかをもう少しのばしたいものだと苦心していた。
恭二の講義をもう少し聴きたい気持ちももちろんであったが、それだけではなく、かれはこのウィーンに来てすぐ、初恋となる女性に巡り合ったのだった。彼女は、情熱的なブロンドで、美しかった。語学教師をしており、ザクセンとアーリアンの出身であった。若い二人はすっかり夢中になって、中尉は、彼女をぜひ結婚したいと思ったのだった。そのために、なんとかもう少し休暇をのばしたいと思ったのである。
そんなある夜、かれは奇妙な夢を見た。
かれの両親が、かれの異母兄の悲惨な運命について、悲しげに語り合っている夢であった。
その異母兄というのは、今から30年ほど前に、かれとおなじように、このウィーン大学で勉強していたのだった。ところが、これもかれとおなじように、ブロンドの髪のアーリアンとザクセンの出身である語学教師の女性を愛してしまったので明日。
ふしぎなことに、いま、かれが心から結婚したいと願っている女性となにもかもおなじであった。出身がザクセン・アーリアンであ理、情熱的なブロンドであり、なんと語学教師という職業までおなじだったのだ。
かれの異母兄はその女性と結婚し、そのため、結局、医師国家試験の受験を断念しなければならないことになってしまった。そしてかれの結婚は完全に失敗であった。悲惨といってもよかった。これらのことは中尉(ソンディ)の生まれる前に起きたことで、くわしいことは知らなかった。幼少の頃に耳にしたまま、もうほとんど思い出しもしないような出来事だった。
どうしてこんな夢を見たんだろうか?』

異母兄の運命をそのままそっくりに反復しようとしていたソンディ。
これを単なる、偶然の一致と言って片付けてしまって良いものでしょうか?

2、危うく異母兄の〈不幸な運命〉を反復しそうになる!

異母兄の不幸な結婚の結末を知ったソンディ。
続きを見てみましょう。


『明けがた目を覚ました中尉は、妙に生ま生ましいこの夢を思い返しているうちに、電気に打たれたように愕然となった。
なんという暗号!
しかしかれは直感した。これは偶然の暗号ではない!かれは無意識のうちにこの異母兄の運命を反復しようとしているのだ!だが、なぜ?かれは必死に考えて。かれは精神科の医師であった。心理学を学び、「無意識の意識」のはたらきをよく知っていた。これこそその無意識の意識のはたらきにちがいない。
・・・かれはこの運命の反復を恐れた。どういうところからこの運命の反復がはじまったのかわからなかったが、この流れに乗ってはいけないことだけは、直感的に感じた。
かれはつよい意思と理性をはたらかセテ、この無意識に意識の強制と戦った。
断ちがたい愛着をたち切り、ただちにウィーンを去ることに決意した。』

こうした強烈な体験によって、ソンディは先祖の運命の反復という現象を考えたのですね。
この異母兄は、悲惨な結婚生活ののちに、自殺し、相手の女性も、その数年後に、自殺にひとしい惨めな死に方をしたといいます。
ソンディは、この異母兄の死の三年のちに生まれています。

3、なぜ、先祖と同じ運命を反復するのか?


1、リポット・ソンディ博士の「運命心理学」

ここまでリポット・ソンディの、
「人の運命は、先祖の抑圧意識によって決定される」
という考えをご紹介してきました。

さて、現代の人の無意識に関わる心理学は、実質的にはジークムント・フロイトに始まります。
フロイトは個人の中に眠る無意識層に着眼し、精神心理学を打ち立てました。
その後、カール・グスタフ・ユングは、集団(社会)の心理の中にある無意識層からの影響を見出しました。
二人ともよく名前の知られた心理学者(精神科医)ですね。

1、フロイトの、個人的に抑圧された無意識
2、ユングの集合的(普遍的)無意識

ところがそこに、第三番目の無意識の研究方向が出現したのです。
それは、人のさまざまな精神病理を見ていくうちに、フロイトの〈個人の抑圧意識〉や、ユングの〈普遍的無意識〉のいずれでも解明できない心理現象があることわかってきたからです。
そこでリポット・ソンディ博士は、〈家族的無意識〉というものがあることを提唱したのです。

2、ソンディー理論とは?
リポット・ソンディ博士の理論というものは、次のようなものです。

「個人の深層意識のなかに抑圧されているある特定の祖先の欲求が、その個人の恋愛・友情・職業・疾病および死亡における無意識的選択行動となって、その個人の運命を決定する。」

つまり、自分の運命が、先祖の中の特定の人の抑圧意識によって、自分の知らないうちに決定されていくということです。

私たちは、自分の意思で、恋愛(結婚)の相手、友だち、仕事を選んでいるでしょ⁉︎
これらはすべて人生の運命を大きく左右する要素ですね。
しかし、ソンディによれば、そうした人生に関わる重大な要素を、自分の意思で選んではいるのですが、それ自体が先祖の抑圧意識によって、選ばれている、ということなのです。
それどころか疾病(病気)ですら、選んでしまっているというのです。
だれしも好き好んで、こういう病気になりたい、なんて思わないでしょう。
しかし、疾病ですら、先祖の抑圧意識による、というのです。

4、人の〈運命〉は、はたしてどこから形成されるのか?


1、特定の先祖がたどった運命を、そのまま自分が繰り返してしまう!
先ほど、「運命が、自分の知らないうちに決定されていく」といいました。
が、当の本人にとっては、もっともな理由(わけ)があって、行動を起こしているのです。
しかしその結果、結局は先祖の抑圧意識の通りの人生を歩んでいる、ということのです。
つまり、特定の先祖の不幸な人生を、そのまま反復して自らが同じ人生を歩んでしまうのです。

さらにソンディは、職業選択に関しても、人は無意識的な衝動で、特定の職を選ぶといいます。

この事について、『増補 運命心理学入門』(佐竹隆三著)より引用してみます。

『このような職業選択様式の範例として、同じ家族の中で一人は放火犯となり他の一人は消防夫となっていう事例が、ソンディによって述べられている。あるいはまた、家族に一人が犯罪者となり、これとは反対に、他の一人が刑務所看守となっている例もある。
(中略)
エレンベルガーは、その一人が顕著な犯罪者であり、他の一人が優秀な刑務所看守であるという一卵性双生児について報告しているからである。』

つまり、先祖の運命による無意識の意識が、子孫にそれと同じか、あるいは、まったく正反対の職業となって現れるというのです。

2、〈運命〉はここから作られている
先にご紹介しましたドストエフスキーについて、
『ドストエフスキーの祖先の系列の中には、実際に殺人者と聖職者とが現れている。』
とありましたが、人は、その職業を選ぶにあたって、先祖の運命を無意識的に反復しているのです。
自分の意思で選んでいるとしても、その「自分の意思」自体が、無意識の世界では、先祖からの衝動を受け継いでいるようなのです。

これは職業だけではありません。

『このような衝動的な要求の中に、恋愛・友情・職業・疾患および死における選択にさいしての「先祖の強制」が存在するのである。』(『増補 運命心理学入門』)


つまり、友達や恋愛(結婚)の相手で、誰を選ぶのか、も同じです。
そうした人生において、自分の人生(運命)を大きく左右する出会いや疾患(病気)、死亡形態ですら、「先祖の強制」がある、というのですね。

みなさんは、世の中の人と自分とを比べて見て、
「なぜあの人は、いつもこんなにうまくいくのだろうか?」
「それに比べて、自分はなぜいつもダメなんだろう?」
こんな疑問を持ったことはありませんか?

今日は、こうした〈運命〉の持つ不思議について、考えてみました。
このブログが、みなさまのより深い洞察の一助になれば幸いです。

5、まとめ


・リポット・ソンディ博士によると、『ある特定の祖先の欲求が、その個人の恋愛・友情・職業・疾病および死亡における、その個人の運命を決定する』という
・ドストエフスキー自身「潜在的な殺人者」であり、それゆえに、彼の小説の主人公として、「殺人者」を選んだ
・ソンディ自身が、危うく異母兄の〈不幸な運命〉を反復しそうになった
・人の運命には、恋愛・友情・職業・疾患および死における選択にさいしての「先祖の強制」が存在する

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